天皇陛下がパラオ・ペリリュー島を訪問された。
わしは小さなボートでコロール島から渡ったが、前日に天候が
大荒れになった後だったので、まだ波の高さがすごくて、
尻を何度も船底にぶつけながら、水浸しになって航行した。
波が高くなりすぎると、何度かボートを止めて、波の様子を
窺い、再び動き出すという怖さに一時間ほど耐え、ようやく
ペリリューに上陸したものだ。
まさか両陛下があんなボートで渡るわけにはいかないから、
ご不便かもしれないが巡視艇に宿泊して、ヘリで行かれる
のは正しいと思う。
パラオの様子がニュースで流れているが、小さな島なので、
わしも行ったところばかりだ。
ルポを描かないままになってしまったが、現在執筆中の
例の大作はこの島の戦いが設定の舞台である。
だが史実よりも、センチメンタリズムが通用しない究極の
地上戦での心理劇を描くことに、わしの興味はあった。
ペリリューでは米軍を迎え撃つために、島民を避難させたのが、
現在の島民感情の良さに繋がっている。
沖縄戦では本来、首里城で決戦しておけばよかったのに、
南部撤退で長期戦に持ち込んだのが失敗だった。
一般住民を巻き込んでしまったのが、現在の沖縄県民の軍隊
アレルギーに繋がっている。
戦争における作戦は重要である。
勝つためなら何でもありだと考えて、道義を軽んじると、
後世に禍根を残すことが確かにある。
次の戦争では、道義なき作戦、大義なき戦争が何を残すかを、
よく考えた方がいいと忠告しておく。